経営学部同窓会事務局便りNO.3

2006.12.05

大阪金属株式会社 阪口 新太郎 代表取締役社長
  阪口新太郎社長  経営者に学ぶ私の将来 
 〜これからの中国ビジネスと日本人が誤解している中国〜

今回、龍谷大学経営学部寺島教授「実践・キャリア形成論Ⅱ」の授業で、大阪金属株式会社代表取締役社長の阪口新太郎氏が12月5日(火)4講時」(15:00-16:30)2号館201教室に於いて90分間大学の講師を務められました。
 経営学部同窓会役員としては、既に10月3日の和光化学工業株式会社・代表取締役社長米田禎孝氏、10月31日の東英産業株式会社・代表取締役社長寺本英樹氏に引き続き、第3番目の講演となりました。
 阪口氏は、経営学部同窓会副会長でもあるが、自らの父が経営する大阪金属株式会社が破産に追い込まれ、そんな中で阪口氏が代表取締役社長に就任し、数少ない役員4名、内2名は定年退職で、実質役員2名で今日の会社を再建した実績をもとに、人と人のつながりのありがたさや「経営者に学ぶ私の将来」と題して話しが進められた。
 平成8年度当時、2億円の税金を支払うのにもどうするのかなど大変であったと振り返る。約束手形が欲しい、しかし、信用のみである。自らの足で人を頼りにして歩いた。自らの行動は、必ず人は応えてくれるという。何とか約束手形を切ることができ、社員も大幅に削減し、工場は近代化による5億円の設備投資をした。それから10年、今日大阪金属株式会社は、鋳物を専門に製造しており、現在は、農業機械、建設機械用銑鉄鋳物部品、産業機械用銑鉄鋳物部品、水道用鋳物異形管類を主な製品とするが、自動車産業界には手を出さないという。本社工場、和泉工場営業所、広島営業所、関連会社としては朋友金属株式会社、中国の上海阪朋金属材料有限公司があるが、年間売上高14億円(7,000トン)、社員35名(内女子5名)で、月産300トンの生産能力を有する企業に今日への成長の過程を経てきたことに阪口社長は自信をもつ。
 会社スローガンも「情熱と信念で誇れる製品を作ろう」(クレームゼロをめざす)として、今後年次計画的に2007年度にISO9001(品質マネージメントシステム国際標準規格)を取得する。また、2010年にISO14001(環境マネージメントシステム国際標準規格)を取得すると社の目的を定める。 しかし「匠の技」を持つ「現代の名工(1名)」、「なにわの名工(2名)」が存在するなど、会社の技の独自性からもISOを取得しても名刺には刷り込まないだけの会社信用を持たしていくと目標を定め強調される。
 中国との事業活動を通し「私から見て感じた中国」として、阪口社長の実体験をとおした中で感じられた点であるが、「人としては、(相対的に)ブライドが高く、自己主張が強い、人をなかなか信用しないが信用すると朋友(友達)になる、大きい会社小さい会社に関係なく、毎月仕事をくれる会社がよい会社、1ヶ月で風景が変わる(スクラップアンドビルド)、金銭欲、出世欲が強く、ドライである、チャイナードームは今からでも遅くない、2004年10月、2005年4月の反日運動及び重慶・北京でのアジアサッカー大会の暴動に対する日本のメディア報道は正しくなかった(一部のみ捉えて報道していたが、日本企業に対しては友好的であった)」などと「日本人が誤解している中国」についての感想が披露された。阪口社長の人柄が現れているのは、次世代の人にバトンタッチのために設備更新を実施し、20年先まで使える設備を整える。会社は株主や経営者のものではない。社員とその家族のものである。従って、能力主義や成果主義によるのではなく年功序列を基本賃金とし、毎年3%の給料(ベース)UPを図る。こうすれば、入社時に退職金が判明し、社員がさらに磨きをかけてくれることに期待する。
 最後に現役の学生に対し、社会人になるにあたって「一番大事なことは、6ヶ月の目標を立て、紙に書きトイレに貼っておくこと」、「自分の頭で考えたことは必ず実現できる」これまでの会社経営を体験するなかで経営者阪口社長の人生訓として、「人は助けてくれる、但し、自分も人に尽くすこと」、仕事や会社は「やりがい」であり、家族や家庭を大切にすることは「生きがい」であると人生哲学を多くの学生を前にメッセージとエールを送り締めくくられた。

         文責:経営学部同窓会事務局長 辻川淳一